再生可能エネルギーの導入が進む一方で、その安定供給が大きな課題となっています。小売り電力事業者として、効率的で信頼性の高いエネルギー供給を実現するためには、どのような取り組みが必要でしょうか。
本ページでは、バーチャルパワープラント(VPP)をはじめとする新たな技術を活用した安定供給の解決策をご紹介します。さらに、日本ガイシのNAS電池やリコーのブロックチェーン技術といった具体的な事例を通じて、次世代のエネルギー供給モデルについて詳しく解説します。
目次
COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)で採択されたカーボンニュートラルへの取り組みとして、世界中で脱炭素の動きが加速しています。日本も例外ではなく、石油や石炭などの化石燃料を使ったこれまでの発電方式から、太陽光や風力などを発電源とした持続可能なエネルギーの供給にシフトしています。
2021年時点で、日本の発電電力量に占める再エネ比率は20.3%(水力発電を含む)となっています。また、再エネ発電設備容量は世界第6位(138GW)、中でも太陽光発電は世界第3位(78GW)となっており、国土面積あたりの太陽光発電導入容量は主要国の中でもトップクラスです。
参考:経済産業省自然エネルギー庁 公式サイト(https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2023/07.html)
再生可能エネルギーは、CO2排出量が少なく環境にやさしい一方で、気候の影響を受けやすいという弱点があります。消費者に電力を安定的に供給するためには、蓄電池や需給調整のための仕組みが不可欠です。
そこで近年注目されているのが、バーチャルパワープラント(VPP)です。VPPとは、一般家庭や企業に設置された小規模電源設備を遠隔操作で束ねて、統合・制御するシステムです。各地に分散したエネルギー源をまとめることで、仮想的な発電所のように運用することができ、再生可能エネルギーの安定的な供給が実現します。VPPは、分散型エネルギーリソースを活用した新たな電力供給モデルとして注目されており、国外でも商用サービスが始まっています。世界のVPP市場規模は、2024年の18億6千万ドルから2032年までに239億8千万ドルに成長すると予測されており、今後急速に発展していくと考えられます。
そのVPPにおいて、電力の安定的な供給をもたらすために欠かせないのが大型蓄電池の技術です。蓄電池には、鉛、ニッケル水素、リチウムなどの種類がありますが、中でも大容量でVPPの安定運用に特性があるのがNAS(ナトリウム硫黄)電池です。NAS電池は自己放電がほぼなく、充放電効率やエネルギー密度に優れた蓄電池です。他の種類の蓄電池と比較して寿命も長く、環境負荷低減に貢献が期待されています。
参考:FORTUNE BUSINESS INSIGHTS( https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/業界-レポート/仮想発電所市場-101669)
参考:NAS電池とは|日本ガイシ株式会社(https://wwhttps://www.ngk.co.jp/product/nas-about.html)
VPPの安定的な運用に欠かせないNAS電池は、日本ガイシ株式会社と東京電力によって共同開発されました。電池用固体電解質の開発にはじまり、蓄電池としての長期性能と安全性の確立に向けた研究が続けられ、2002年に事業化。以降、全世界で約200カ所、総出力56万Kw、総容量400万Kw時以上の設置実績があります。
国内では、2019年にTOTO株式会社の小倉物流センターにてVPPの実証事業が開始されました。導入されたNAS電池は定格出力600Kw、定格容量3,600Kw時規模で、昼夜の電力使用負荷を平準化することで購入電力のコスト抑制を目的としています。
参考:日本ガイシ株式会社 公式サイト(https://www.ngk.co.jp/news/20190415_10496.html)
国内でもVPP市場が活性化する中、2023年2月に日本ガイシと株式会社リコーが電力事業に関する合弁会社「NR-Power Lab」を立ち上げ、事業を開始しました。NR-Power Labでは、日本ガイシのNAS電池制御技術と、リコーが保有するブロックチェーン技術を活用した電力デジタルサービスを組み合わせ、付加価値を高めた新しいエネルギーサービスの提供を目指しています。
リコーでは、ブロックチェーンによる改ざん検知性、データ信頼性およびトレーサビリティーに着目した、再生エネルギー向けの流通管理を実現。発電量が不安定な再生エネルギーを効率的に管理するとともに、その電力が再エネであることを保証し証明プロセスを廃することで、コストダウンによる再エネ普及に貢献します。
参考:株式会社リコー 公式サイト(https://jp.ricoh.com/release/2023/0201_3)
日本ガイシとリコーの共同事業「NR-Power Lab」では、2024年より山形県長井市のおきたま新電力と、秋田県鹿角市のかづのパワーにおいて、電力デジタルサービスの実証を開始しました。
これは、電力の地産地消と域内経済循環の促進に向けた取り組みの一環で、VPPの効果を「見える化」するために、地域の拠点にモニターを設置したものです。目に見えない仮想発電所をより身近に、そしてメリットを実感してもらうことで、パートナー共創を加速させていきます。
参考:NR-Power Lab株式会社 公式サイト(https://www.nr-power-lab.jp/news/278/)
両社のネットワーク技術や産業用蓄電池といった強みを融合させ、再生可能エネルギーの普及に貢献しています。
設立以来、多数の実証実験を重ね、2026年のVPP(バーチャルパワープラント)の本格稼働に向けLABとして着々と準備を進めています。
このサイトはVPPを世間の皆様に知っていただくためにNR-Power Lab株式会社をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。