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近年、さまざまな要因から電力調達コストが上昇しています。石炭や石油など火力発電に欠かせない化石燃料の価格高騰に加えて、円安による影響などを受け、小売電力の価格は上昇を続けています。政府の補助政策も一時的なもので、今後も電気代の負担増は避けられない状況です。
産業における影響も多大で、2024年版の中小企業白書によれば、電気代や燃料費などのエネルギーコストが「上昇した」と答えた製造業は8割を超え、足元の物価高を受けてコスト増を実感している企業が多いことが分かります。電力使用量が多い工場を持つ製造業では、電気代の高騰が収益悪化に直結するため、経営改善には抜本的な対策が必要です。
参考:[PDF]中小企業庁 2023年版「中小企業白書」(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap3_web.pdf)
小売電力を使い続ける限り、外的要因によるエネルギーコスト変動の影響は避けられません。そこで考えられるのが、自分たちの使う電力を自分たちで作りまかなう自家発電システムの導入です。
現状、最も広く普及しているのが太陽光発電の自家消費であり、工場の屋根や遊休地を活用した発電システムの構築によって、高い電力自給率を実現している企業が増えています。さらに、発電システムを蓄電池と組み合わせることで、余った電気を夜間に回して、電力負荷の平準化を実現します。
自分たちで使う電気を自家発電することができれば、小売電力の価格変動から受ける影響を最小限に抑えることができます。工場の屋根はパネルを設置するのに適しており、多業種に比べて大規模発電を実現しやすいため、高い電力自給率を実現できます。蓄電池の活用によって、24時間稼働の工場が昼間に作った電気を夜間に使い、電力負荷の平準化を図ることができます。
太陽光発電は、従来の火力発電等に比べてCO2排出量が少なく、環境負荷の低い発電方法です。このようなグリーンエネルギーを積極的に取り入れる企業が増えれば、規模の経済により導入コストの低減も期待できます。
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みは、消費者だけでなく、取引先や投資家などすべてのステークホルダーへのメッセージになります。近年は、企業の社会的責任(CSR)への取り組みを重視して投資先を決定する「ESG投資」の考え方も広まっています。そのような投資家から支持を受けることは、企業価値の向上にもつながるでしょう。
ここまで紹介してきた太陽光発電による自家発電ですが、一つの企業の発電量や蓄電量、投資できる金額には限りがあります。そこで近年注目されているのが、様々な企業や家庭の発電源をネットワークで連携するバーチャルパワープラント(VPP)のしくみです。
VPPでは、ネットワークでつながった域内の分散電源を、仮想の発電所のように管理して電力の需給バランスを調整します。同時同量の原則に基づき、どこかで余った電力を足りないところへ供給したり、予測に基づいたディマンド・リスポンス(DR)によって、電力需給パターンを変化させたりして、再エネの安定供給を実現します。
参考:経済産業省資源エネルギー庁 公式サイト(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/dr/dr.html)
まだ実証実験段階のVPPですが、日本ガイシとリコーの合資会社であるNR‐PowerLab株式会社では、さまざまな実証実験やセミナー、動画なども公式サイトで展開しています。
両社のネットワーク技術や産業用蓄電池といった強みを融合させ、再生可能エネルギーの普及に貢献しています。
設立以来、多数の実証実験を重ね、2026年のVPP(バーチャルパワープラント)の本格稼働に向けLABとして着々と準備を進めています。
VPP導入に必要なのは、太陽光などの発電設備や蓄電池、電気自動車などの分散型電源です。次に、VPPのアグリゲーターと連携して、VPP参加のためのDRメニューを決定します。自社の事業条件に合うメニューを選び、契約することでVVPへ参加できます。
VPP導入によって、企業は災害時のレジリエンス向上が期待できます。また、ネガワット取引を選択することで、節電成功時にインセンティブを受け取ることができます。このことは社内における節電意識の醸成にも役立ち、通常時の電力使用量削減につながるとともに、環境経営にも帰結します。
当メディアではバーチャルパワープラントについてどこよりも詳しく簡単にまとめています。興味を持った方はぜひご覧ください。
工場の経営において、電力コストの高騰は切っても切り離せない課題です。自家発電により電力自給率を高めることで、小売電力の価格変動の影響を和らげることができ、長期的な電力コストを見通すことができるメリットがあります。
また、VPPを通じて域内電力の循環に参画することで、再生可能エネルギーの効率的な需給を実現し、災害時のレジリエンス向上なども期待できます。工場の未来を考えたエネルギー戦略の実現に向けて、企業の自律的な取り組みが求められています。
このサイトはVPPを世間の皆様に知っていただくためにNR-Power Lab株式会社をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。