目次
オフィスビルは、企業が活動している昼間に電力をたくさん消費し、営業時間外の夜間はほとんど電力が使われません。一方、電力料金は一般的に、昼間は高めに、夜間は低めに設定されています。
電気料金の高い昼間に多く活動が行われるオフィスビルでは、夜間に蓄えた電力を昼間に使うピークシフトを取り入れることにより、最大デマンドを抑え、電気料金の削減が可能になります。
近年は、世界的な環境への取り組みとして、カーボンニュートラルへの意識が高まっています。社会的なサステナビリティ要請のもと、テナントビルやオフィスビルの管理者も、CO2排出量削減に向けた配慮と施策が求められています。
昼間の電力使用量が多いオフィスビルは、太陽光発電システムによる自家発電と親和性があります。屋上や外壁に太陽光パネルを設置し、ビル内で使う電力を自給自足することで、電力コストやCO2排出量の削減に貢献します。
一社一社が環境に対する意識を高め、CO2排出量削減に取り組むと同時に、オフィスビル全体でエネルギー管理を行っていくことで、より大きな効果を得ることができます。また、そのような取り組みは消費者や投資家などステークホルダーの関心を集め、企業価値の向上にも寄与します。
オフィスビルにおける効率的なエネルギー管理には電力ピークシフトが効果的です。ただし、ビル全体の電力をまかなえる大容量の蓄電池を用意する必要があるため、削減できる電気代と蓄電池コストのバランスをしっかりと検討する必要があります。
前述のようなデメリットを解消し、再生可能エネルギーを域内で効率的に融通しようというのが近年注目されているバーチャルパワープラント(VPP)の仕組みです。VPPは、地域内のオフィスビルや一般家庭にある太陽光発電などの分散型電源をネットワークし、電気の余っているところから足りないところへ送ったり、需給予測に応じて全体の発電量を調整したりするシステムです。
VPPでは、エネルギー需給の最適化と余剰電力の収益化が可能になります。FITによる買取制度が終了した後も、VPPアグリゲーターとネガワット取引をすることで、節電のインセンティブ(報酬)を得ることができます。エネルギー自給自足の一歩先を行く、シェアリングエネルギーに踏み出すことで、環境負荷低減と同時に設備投資の早期回収も実現するのがVPP特有の付加価値です。
神奈川県横浜市では、「Zero Carbon Yokohama」として、地球温暖化対策やエネルギー施策を推進しています。その一環として、2016年から地域防災拠点に指定されている市内小中学校に蓄電池設備などを設置し、市内でのVPP構築事業を展開しています。
港北区総合庁舎は、想定最大規模降雨時に約2mの浸水が想定されていますが、非常用電源等は地下階に設置されており、浸水時には全電源を喪失してしまうリスクがありました。このVPP事業で電力供給契約とともに45kWh容量の蓄電池を備えることで、区災害対策本部の機能維持に必要な電源を確保し、防災体制を強化しました。
参考:横浜市 公式HP[PDF](https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/green/2019/0605_84.files/0001_20190604.pdf)
現状、多くのオフィスビルでは、省エネやピークシフトなどの取り組みが行われています。これらの多くはオフィスワーカーの行動や配慮に依存した取り組みであり、ビルの管理者はさらに根本的なエネルギー戦略を構築することが求められています。
まずは太陽光発電の導入による電力の自給自足、蓄電池を活用したピークシフトの取り組みが基本となります。それに加えて、VPPへの参加によって域内エネルギーを効率的に活用することで、オフィスビルの長期的かつ安定的なエネルギー管理が可能になります。
自社だけでなく全体最適に目を向けることは、これからのサステナブル社会に欠かせない視点です。VPPへの取り組みは、経済的なメリットだけでなく、環境配慮の実現や企業価値の向上といったバリューも生まれます。オフィスビル管理を通じて、新たなエネルギー戦略の必要性を考えてみましょう。
当メディアではバーチャルパワープラントについてどこよりも詳しく簡単にまとめています。興味を持った方はぜひご覧ください。
両社のネットワーク技術や産業用蓄電池といった強みを融合させ、再生可能エネルギーの普及に貢献しています。
設立以来、多数の実証実験を重ね、2026年のVPP(バーチャルパワープラント)の本格稼働に向けLABとして着々と準備を進めています。
このサイトはVPPを世間の皆様に知っていただくためにNR-Power Lab株式会社をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。