太陽光発電や蓄電池など、小規模なエネルギー源を指す分散型エネルギーリソース(DER)。主に仮想発電所(バーチャルパワープラント・VPP)と組み合わせて活用されており、エネルギー利用の最適化や供給安定化に貢献するものとして期待されています。
目次
DERは、全国各地に分散したエネルギーリソースを指す言葉です。主に電気を消費する需要家が所有する小規模な発電設備や蓄電池、電気自動車(EV)などで構成されています。これらは全国各地に分散しており、VPPと組み合わせると一つの発電所のように振る舞うことが可能です。
DERは各地に散らばるエネルギーリソースを集約し、エネルギー利用を最適化させるものとして注目を集めています。また、再生可能エネルギーの利用促進や、それに伴う二酸化炭素の排出量削減も期待されています。
従来の集中型エネルギーシステムは、電力需要地から離れた場所に大規模な発電施設を設置し、送配電網を通して需要家に電力を供給しています。主に火力発電や原子力発電、水力発電などが利用されており、一度に多くの電気を生み出すことが可能です。
しかし、集中型エネルギーシステムでトラブルが起こると、電力供給能力が失われて大規模停電が起こるリスクがあります。また、発電施設や送配電網の設置にかかるコストも大きく、投資額が膨らんでしまいがちです。
一方のDERは、需要家が持つ小規模な発電設備・蓄電設備を指します。主に設備がある近隣地域に電力を供給するため、エネルギーの地産地消が可能です。また、設置にかかるコストも小さく、特定の設備でトラブルが起きても他の設備でカバーできる柔軟性を有しています。
DERは、大きく分けて4つの種類があります。
DERを構成するエネルギーリソースのうち、ポピュラーなものがソーラーパネル(太陽光発電)や小型の風力発電です。太陽光発電は需要家が個人で所有しているケースも多く、ポピュラーな再生可能エネルギーの一つといえます。また、自然環境によっては小型風力発電を設置しているケースも見られます。
DERは、こうした再生可能エネルギーを主要なリソースにしています。今後DERやVPPが広まれば、さらに太陽光発電などの設備の導入・普及が進むことも考えられます。
蓄電池システムもDERを構成する要素の一つです。蓄電池は太陽光発電などの設備とセットで導入されることも多く、個人や小規模な事業所が所有するケースも珍しくありません。また、蓄電池には発電した電力を貯めておけるため、エネルギー利用の最適化や安定化に貢献するポテンシャルを秘めています。
デマンドレスポンス(DR)もDERの一種といえます。DRは電力の需給バランスをコントロールする手法のことです。主にアグリゲーションコーディネーターが発電事業者と需要家の間に立ち、需要家に対して出力の抑制などの司令を出します。DRは電力の安定化に大きな影響を及ぼす要素ですが、活用次第ではエネルギー利用の効率を高められる可能性があります。
マイクログリッドもDERの一種とみなされます。マイクログリッドは、小規模なエネルギーのネットワークを指す言葉です。主に太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーが用いられています。限られたエリア内で電力を供給するため、エネルギーの地産地消を推進できるのが特徴。一方、災害時には地域の非常用電源として利用できる柔軟性があります。
太陽光発電や蓄電池など多種多様なDERですが、導入することで多くのメリットを受けられます。
DERのメリットの一つがエネルギーの安定化です。従来の集中型エネルギーシステムは、施設でトラブルが発生すると広域に影響を及ぼします。複数の自治体にまたがる大規模な停電が起こる可能性もゼロではありません。
一方、小規模な設備をまとめたDERを導入すれば、エネルギーの供給源を分散することが可能です。特定の設備のトラブルも他でカバーできるため、大規模停電などのリスクを低減できます。エネルギーの安定供給が可能になるほか、信頼性も向上するでしょう。
また、DERはエネルギーコストの削減にもつながります。従来の大規模な発電施設はへき地に設置される場合が多く、需要地まで距離があるケースも少なくありません。しかし、電気は距離が離れるほど送電ロスが起きるため、その分エネルギーコストが高くなりやすいのです。また、施設の維持にかかるランニングコストも大きいのがネックといえます。
一方、DERは需要地に近い場所に設備があるため、送電ロスを減らすことができます。発電にかかるコストも少なくできるため、電気料金の削減に繋がる可能性を秘めています。
環境貢献度の高さもDERもメリットといえるでしょう。DERは主に再生可能エネルギーを利用するため、発電時の二酸化炭素の排出を抑えられます。従来の発電施設よりも環境に優しいため、持続可能性を高めることができます。
また、再生可能エネルギーの利用拡大に貢献できるのもポイントです。企業でDERを導入すれば、SDGsやESG・脱炭素経営の推進にもつながるでしょう。
エネルギー自給率の向上にもDERが寄与します。日本はエネルギーの大半を輸入に頼っており、エネルギーの自給率の低さが課題となっています。しかし、全国各地に散らばるDERを活用すれば、エネルギー自給率を高められる可能性があります。
また、集中型エネルギーシステムとは違って発電設備が分散しています。そのため、災害などの非常時でも安定したエネルギー供給源の確保が可能になります。
ここからは、住宅や企業でのDER導入事例をご紹介します。
けいはんな学研都市では、住宅700戸を対象に、電力の需給バランスに応じて需要サイドで追従を行う実証実験を実施しました。また、家庭での一層の省エネを推進するために、電力会社によるコンサルも行われました。
北九州市では、鉄鋼メーカー「新⽇鐵住⾦」の特定の供給エリアをベースに、コージェネレーションをベースロード電源とした実証実験を行いました。同実験は需要家180戸に対して、需給バランスに応じて電気料金を変動させるダイナミックプライシングが採用されています。
宮城県⼤衡村は、コージェネレーションなどによって発電した電気を工業団地内の需要家へ融通するエネルギーマネジメントシステムを構築しました。同システムは需要側・供給側が一体化されており、通常時は工業団地内で地産地消できる仕組みを整えています。一方、非常時には電力を防災拠点へ回すなど周辺地域と連携できるようになっています。
DERは、VPPと組み合わせることでさまざまなメリットをもたらします。
DERとVPPを組み合わせることで、エネルギー供給の効率化を実現できます。
VPPはエネルギーリソースを一括管理し、必要に応じて制御することが可能です。例えば電力需要が増えた時には蓄電池から供給したり、需要が減った時には蓄電池に充電したりできるようになります。DERが持つリソースを集約して運用できるため、エネルギーの最適化にもつながります。
VPPとDERを組み合わせた事例です。横浜市では、400戸の住宅や大規模なビルなどを対象に大規模な実証実験を行いました。また、蓄電池などを統合的に管理し、大規模な発電所として見立てるVPPの実証実験も実施されました。
DERは実証実験が始まったばかりの技術ですが、エネルギーの供給安定化に寄与する可能性を秘めています。日本は太陽光発電が普及しており、小規模な発電設備が分散しています。一連の設備を上手に活用すれば、エネルギーの自給率向上も期待できるでしょう。また、再生可能エネルギーの利用が拡大し、持続可能なエネルギー供給の実現に近づける可能性があります。
新たなエネルギーソリューションとして注目を集めているDERやVPP。企業のSDGsやカーボンニュートラルを推進し、企業の付加価値を高めてくれる可能性を秘めています。
当メディアではバーチャルパワープラントについてどこよりも詳しく簡単にまとめています。興味を持った方はぜひご覧ください。
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