余剰電力は、使用できずに余ってしまった電力のことをいいます。太陽光発電などの設備で発電した電力(供給)に対して、使用量(需要)が下回ると余剰電力発生します。電気は常に発電しないといけないため、余剰電力が発生することは珍しくありません。
しかし、活用方法次第ではエネルギー使用の効率を高め、発電コストを削減できる可能性があります。
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どれだけ発電効率を高めたり需給バランスをコントロールしたりしても、余剰電力は少なからず発生してしまいます。余剰電力が発生する理由は主に2つありますが、特に卒FIT後は注意が必要です。
余剰電力が発生している理由の一つが再生可能エネルギーの普及です。固定価格買取制度(FIT)が開始して以来、日本では太陽光発電が一般家庭にまで普及しました。また、地球温暖化や脱炭素化などの影響もあり、全国で再生可能エネルギーの導入が進んでいます。
しかし、太陽光・風力などの再生可能エネルギーは自然環境によって発電量が大きく変動します。例えば太陽光発電の場合、曇や雨の日はほとんど発電できませんが、快晴なら多くの電力を生み出せます。風力も同様で、風が強い日には多くの電力を生み出すことが可能です。
一方、太陽光・風力などでの発電量が需要を大きく上回ると余剰電力が発生します。特に近年は再生可能エネルギーが普及しているため、余剰電力が生まれやすくなっているのです。特に電力会社との契約が切れるFIT終了後(卒FIT)は、電気の買取価格が安くなるため、余剰電力を持て余してしまうケースもあります。
もう一つの理由は需要と供給のバランスです。電力の需給バランスは常に変動しており、季節や時間帯によっては需要または供給が一気に変化する場合もあります。そのため、電力の需要に対して供給が上回った状態になると、余剰電力が発生してしまうのです。
常に需給バランスを予測し、適切にコントロールできれば、余剰電力が発生することはありません。しかし、電力の需給バランスを的確に予測することは困難で、少なからず発生するのが実情です。
一方、余剰電力を活用するための仕組みや技術開発なども行われています。貴重な余剰電力を無駄にしないためには、技術の導入などの対策が必要になるでしょう。
余剰電力を活用する方法は、大きく分けて3つあります。それぞれメリット・デメリットがありますので、適切な方法を選択しましょう。
余剰電力のシンプルな活用方法が蓄電池システムへの蓄積です。蓄電池は再生可能エネルギーの普及に伴って技術開発が進み、今では多数の製品が発売されています。太陽光・風力発電で生じた余剰電力を貯められるため、必要に応じて電力を使用できるようになります。
蓄電池システムのメリットは、エネルギー効率を高められる点にあります。例えば余剰電力が発生した際は蓄電池に貯めておき、需要が増えた際は蓄電池から放電するなど、需給バランスに応じた運用が可能になります。需給バランスを柔軟にコントロールできるため、エネルギーの無駄も減らせます。結果的に発電コストの削減にもつながるでしょう。
一方、蓄電池システムを導入する際にはコストがかかります。また維持管理も必要になるため、ランニングコストにも注意が必要です。
余剰電力が発生している場合、売電による収益化も検討する価値があります。売電による収益化は、太陽光・風力などの発電設備を設置し、事業計画の認定を受けることで実現できます。特に一定期間はFITの対象になりますので、固定価格で売電することが可能です。
売電のメリットは、本業以外で新たな収益源を生み出せる点にあります。発電設備の規模によっては、多額の収益をもたらしてくれるでしょう。また、蓄電池システムの導入も不要になります。
一方、収益が安定しない点には注意が必要です。再生可能エネルギーは気象条件によって発電量が変化するため、余剰電力も状況次第で変わります。
余剰電力は、仮想発電所(バーチャルパワープラント・以下VPP)で利用する手段もあります。VPPは、発電設備や蓄電池などの分散型エネルギーリソース(DER)をまとめて管理・運用する技術です。一つの発電所のように振る舞うことから、仮想発電所と呼ばれています。
余剰電力は活用方法は、蓄電・売電などが一般的ですが、VPPを利用すればエネルギーの利用を最適化できる可能性があります。VPPはIoT機器による監視やデータ分析、需要予測などを行い、必要に応じて設備を制御します。そのため、需給バランスに応じたフレキシブルな設備運用を実現可能です。
VPPは海外で市場が確立されており、日本でも商用化に向けて取り組んでいる企業は多数あります。余剰電力の次世代の活用方法として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
余剰電力は重要なエネルギーであり、さまざまなメリットをもたらしてくれます。
余剰電力のメリットの一つがエネルギーの無駄の削減です。余剰電力は、使われなかった電力であり、そのままでは無駄になってしまいます。しかし、蓄電やVPPなどの手段を利用すれば、余剰電力を捨てずに済みます。その分エネルギーの無駄を減らすことが可能です。
また、余剰電力を活用すれば、電力会社からの電気購入量を減らせる可能性があります。その分電気代を節約できますので、光熱費削減にも寄与します。
余剰電力は収益性の向上にも貢献します。先に触れたように、余剰電力は電力会社に買い取ってもらうことが可能です。一定期間はFITによって固定価格で売却できるほか、その後も契約を更新すれば電力会社からの売電収入を得られます。
再生可能エネルギーの発電量が不安定な点には注意が必要ですが、余剰電力を売電すれば企業の収益性を高められます。条件次第では、新たな収益の柱として事業化することもできるでしょう。仮に自家消費が増えて余剰電力が減ったとしても、事業所全体のエネルギーコストは改善されます。
余剰電力を活用すれば、持続可能なエネルギー管理を実現可能です。もし余剰電力を捨て、不足分を電力会社から購入している場合、電力会社の発電施設でトラブルが起こると、電気の供給に影響が出てしまうリスクがあります。状況によっては工場の稼働を停止させたり休業したりなど、事業に影響が及ぶ可能性も否定できません。
しかし、余剰電力を利用できれば不測の事態にも備えられます。蓄電システムが備わっていれば、事業を継続することも可能でしょう。また、災害によって電力会社からの供給がストップした場合でも、余剰電力を活用すれば停電のリスクを抑えられます。
太陽光・風力などの発電施設で生じた余剰電力は無駄になるケースが多く、利活用はほとんど進んでいないのが実情です。しかし、余剰電力を蓄電すれば電力需要が増えた時に利用できるほか、災害への備えにもなります。電力会社へ売電することによる収益化も実現できるでしょう。
また、VPPの普及によって余剰電力の活用が盛んになれば、エネルギーの調達価格が安くなる可能性もあります。再生可能エネルギー源の新たな調達手段として、余剰電力が利用されることも考えられます。このように、余剰電力はさまざまな可能性を秘めています。
そのまま捨てられてしまうことも多い余剰電力ですが、活用すればエネルギーの無駄を減らしたり、収益化したりできます。エネルギー利用の効率も高められますので、ぜひ積極的な活用をおすすめします。
両社のネットワーク技術や産業用蓄電池といった強みを融合させ、再生可能エネルギーの普及に貢献しています。
設立以来、多数の実証実験を重ね、2026年のVPP(バーチャルパワープラント)の本格稼働に向けLABとして着々と準備を進めています。
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