再生可能エネルギーは天候によって発電量が変動しますが、変動へ対処し、効率的なエネルギー管理を可能にするのが蓄電池です。近年は柔軟な需給調整が可能な蓄電池を使ったビジネスが注目を集めています。蓄電池ビジネスは大きな成長の可能性を秘めており、脱炭素社会の実現に寄与すると考えられています。
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再生可能エネルギーの普及に伴って、蓄電池市場は拡大傾向にあります。国・自治体における蓄電池への期待は大きく、自治体によっては導入時に補助金を出しているケースも見られます。また、蓄電池は世界中で普及が進んでおり、2030年には貯蔵能力が2023年度比で6倍になるともいわれています。
蓄電池市場が急速に拡大している背景には、カーボンニュートラル(脱炭素)があります。地球温暖化を抑えるために、各国が二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいます。蓄電池はエネルギーを蓄え、効率的な利用を可能にするため、脱炭素社会を推進するものとして期待されています。このような理由により、今後は蓄電池を使用したビジネスが広まっていくと考えられています。
業務用として使われている蓄電池は、主に3つの種類があります。それぞれの特性や強みをご紹介します。
リチウムイオン電池は、ノートパソコンやスマートフォンなどでも使用されている蓄電池です。蓄電池の中では広く普及しています。リチウムイオン電池はエネルギーの密度が高く、小型化しやすいのがメリット。一方で原材料価格が高いため、導入コストも割高になりやすい欠点を抱えています。
レドックスフロー電池は、電解液を循環させてイオンの酸化還元反応を進めることで充放電を行う電池です。バナジウムイオンの価数変化のみで動作し、電極の劣化が少ないため寿命が長く、メンテナンスの負担が軽減されます。また、充電残量を正確に把握でき、安全性が高い不燃材料で構成されています。さらに、大型化や大容量対応が可能で設計の自由度が高い点も特徴です。
一方で、製造コストが高く、バナジウムの供給不安や価格変動、小型化の難しさなどの課題があります。
蓄電池の中でも特に長い歴史を持っているのが鉛蓄電池です。原材料は鉛や希硫酸などで、車のバッテリーやビルの非常用電源に使われています。鉛蓄電池は導入実績が多く、材料が安価な点がメリットです。一方で充放電回数が増えるにつれて劣化が進み、容量が低下する欠点を抱えています。また、鉛の取り扱いにも注意を要します。
NAS電池は、日本ガイシが製造している蓄電池です。ナトリウムやファインセラミックスなどが用いられています。NAS電池はエネルギー密度が高いため、多くの電力を蓄えられるのがメリット。大きさや取り扱いに注意が必要で設置場所に制限があるものの、kWh辺りのコストを安くおさえられるところが魅力です。
また、NAS電池は寿命もかなり長いため、一度導入すれば長期間利用できるのもポイント。交換頻度を減らせますので、長い目で見るとコストを抑えられる可能性があります。
蓄電池ビジネスは、ユーザーに対してさまざまなメリットをもたらします。また、新しいビジネスモデルの創出にも寄与するでしょう。
蓄電池ビジネスがもたらすメリットとして、エネルギーコストの削減が挙げられます。従来の再生可能エネルギーは、天候や自然環境によって発電量が増加し、余剰電力が生まれる場合があります。しかし、需要が追いつかなければ余剰電力は無駄になってしまうのです。
一方、蓄電池があれば余剰な電力を蓄え、必要な時に利用できる環境が実現します。また、電気料金が安価な時間帯に充電し、料金が高い時間帯に放電するなど、効率的なエネルギーの使用も可能になります。
蓄電池ビジネスは、エネルギーの安定供給と信頼性向上にも貢献する可能性を秘めています。電力を安定供給するためには、常に需要と供給のバランスを取りながら発電する必要があります。蓄電池は電力を蓄えられるため、需要が急増して需給バランスが変化した場合でも、安定的な供給を可能にします。
また、蓄電池によってエネルギーの安定供給体制を確立すれば、インフラの信頼性向上も期待できます。停電などトラブルのリスク抑止にもつながるでしょう。
蓄電池ビジネスは、再生可能エネルギーにおける新たなビジネスモデルとしても注目を集めています。蓄電池のビジネスモデルは、主に以下の3者によって成り立っています。
蓄電池の製造メーカーは、蓄電池の製造を通してビジネスへ貢献できるほか、業界の牽引役として動くことが可能です。アグリゲーションコーディネーターは蓄電池の運用・管理サポートを、蓄電池事業者は土地の確保や土地活用による収益化の提案など、多様なビジネスが可能になります。今後市場が拡大すれば、さらなるビジネスモデルが生まれるかもしれません。
蓄電池は、再生可能エネルギーの普及や脱炭素社会の実現に大きな影響を与えると考えられています。
まず挙げられるのは、再生可能エネルギーの安定化への貢献です。太陽光・風力など主要な再生可能エネルギーは、天候や気象条件によって発電量が変わるため安定性に欠けます。そのため、従来の発電システムのような細かい出力調整は難しいのが実情です。
しかし、蓄電池があれば再生可能エネルギーの安定性が増します。余剰電力が発生した時に蓄え、電力が不足しそうな時には放電すればよいのです。その時の状況に合わせて、フレキシブルな運用が可能になるでしょう。
また、エネルギーの有効活用にも蓄電池が貢献します。電気は基本的に蓄えられないため、常に発電を続けなければいけません。しかし、発電の過程で無駄な電力が生まれると、発電に使用したエネルギーのロスにもつながります。
蓄電池は余剰な電力を蓄えられるため、エネルギーの利用効率の向上に寄与します。また、発電に使用するエネルギーのロスを減らせますので、発電コストの抑制につながる可能性もあります。
蓄電池は、長期的なエネルギー戦略においても重要な役割を担います。蓄電池には一定の電力を貯められるため、非常用電源としての活用が可能です。そのため、災害発生時などには電力を供給したり、電力供給の安定化に貢献したりできます。また、蓄電池はカーボンニュートラルにおいても重要な役割を担っているため、企業の脱炭素経営・ESG経営の推進にも寄与するでしょう。
日本ガイシでは、NAS電池と仮想発電所(バーチャルパワープラント・VPP)を組み合わせたソリューションを提案しています。蓄電池ビジネスに興味がある方は、同社に相談してみてはいかがでしょうか。
NAS電池は日本ガイシが実用化した電力貯蔵システムで、1980年代から東京電力と協同で開発が進められました。従来の鉛蓄電池と比較してコンパクトで、かつ大容量を確保できることから、限られたスペースでも長期間の電力貯蔵が可能です。
このような特徴を持つため、NAS電池は非常用電源や再生可能エネルギーの貯蔵などに適しています。また、再生可能エネルギーの普及やエネルギー利用の効率化、安定化などに寄与する可能性も秘めています。
日本ガイシが開発したNAS電池は、需給調整市場に調整力を供出した事例があります。VPPとNAS電池を組み合わせた技術を中部電力ミライズと協同で構築したもので、2022年4月より事業がスタートしています。これにより、状況に応じたエネルギーリソースの適切な制御や非常用電源など多用途との共存を実現しました。また、NAS電池と複数の事業所のエネルギーリソースを組み合わせた制御も可能にしています。
NAS電池はVPPとの技術的な連携が可能なことから、将来的には両者が一体化したソリューションの提供が期待されます。統一されたシステムの構築も実現できるでしょう。また、今後NAS電池の普及が進んでノウハウが蓄積されれば、新たなビジネスモデルの確立や、ビジネス機会の創出につながる可能性もあります。
蓄電池ビジネスは始まったばかりといってもよく、今後の市場拡大や新しいビジネスモデルの登場・確立など、さまざまな可能性を秘めています。また、VPPによる再エネ設備・蓄電池の保守管理サービスや、データを活用したコンサルティングやソリューションの提案など、新たなサービスが生まれることも考えられます。
市場参入余地の大きな蓄電池ビジネス。環境関連事業を検討中であれば、参入を考えてみるのも手でしょう。
NAS電池とVPPを組み合わせることで、エネルギーの利用効率を高めたりコストを削減できたりする可能性があります。ぜひNAS電池やVPPで次世代のエネルギー管理を始めてみてはいかがでしょうか。
当メディアではバーチャルパワープラントについてどこよりも詳しく簡単にまとめています。興味を持った方はぜひご覧ください。
両社のネットワーク技術や産業用蓄電池といった強みを融合させ、再生可能エネルギーの普及に貢献しています。
設立以来、多数の実証実験を重ね、2026年のVPP(バーチャルパワープラント)の本格稼働に向けLABとして着々と準備を進めています。
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