【小売電力事業者向け】再エネの課題出力抑制の改善策

再生可能エネルギーの普及に伴い、出力抑制が避けられない課題となっています。本ページでは、出力抑制の基本的な概念と、その影響について解説し、具体的な対策方法を紹介します。

目次

出力抑制の背景と現状

出力抑制とは何か?

電力には「同時同量の原則」があり、需要と供給のバランスが常に一致している必要があります。この原則が破られてしまうと電気の周波数が乱れ、停電などを引き起こす原因となります。この同時同量の原則を守るために「出力抑制」が行われることがあります。

電力の出力抑制は、一般送配電事業者の指示によって発電事業者が電気の出力を抑制することです。出力抑制は、発電量が電力需要に比べて過多になるとき実施されます。エアコンがなくても過ごしやすい春や秋は、電力需要が落ちるため出力抑制が起こりやすくなります。

日本および世界の出力抑制の現状

日本国内では、2018年10月に全国で初めて九州エリアで出力抑制が行われました。その後、再エネの導入が拡大するにつれて全国的に出力抑制が起こるようになりました。2023年度の抑制見込みは全国9エリア、抑制率は九州エリアの4.80%が最大です。日本の出力抑制は、平均すると海外よりも低い水準であり、比較的出力抑制が行われていないのが実情です。

一方、海外では出力抑制に関する考え方が日本とは異なります。EA(国際エネルギー機関)や IRENA(国際再生可能エネルギー機関)による柔軟性の概念図によれば、出力抑制は蓄電池よりも前の選択肢として位置しており、社会的便益の観点からは蓄電よりも低コストな出力抑制を戦略的に選択することが推奨されています。

また、日本における出力抑制は500kW以上の太陽光・風力発電に対して前日に電話等で依頼する方式を取っています。一方のドイツでは、双方向通信システムなどを利用して、よりきめ細かな出力調整を実施している点も異なります。

参照元:[PDF]再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けて|経済産業省 資源エネルギー庁(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/063_05_00.pdf

参照元:[PDF]再生可能エネルギー電源別の課題と推進策|経済産業省 資源エネルギー庁(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/pdf/007_01_00.pdf

参考:京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座(https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/contents/column0402.html

出力抑制がもたらす影響とその対策

出力抑制がエネルギー市場に与える影響

日本で出力抑制が「なるべくすべきではない」と考えられている理由は、発電事業者の収益に影響するためです。現状、出力抑制による補償は行われていないため、発電事業者は出力抑制の号令がかかると、せっかく発電した電気をタダで捨ててしまうことになります。発電で得られたはずの事業者の利益をなるべく損なわないよう、出力抑制の指令は慎重な検討と検証の元に発されます。

出力抑制への具体的な対策

経済産業省では、出力抑制をなるべく行わないようにするための取り組みとして、需要面・供給面・系統増強等の3つの観点から対策を検討しています。そのうち需要面では、消費者の行動変容を促す電気料金メニューの多様化や、発電設備等のDR Ready化(通信制御機器の設置)など、足元の対策が挙げられています。また、中長期的な課題として、価格メカニズムを通じた電力需給の調整・誘導が検討されています。

参照元:[PDF]再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けて|経済産業省(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/063_05_00.pdf

出力抑制の課題とその対策としてのVPP導入

出力抑制の課題を解決するための新たなアプローチVPP

出力抑制の課題を克服するための一つの有効な手段として、バーチャルパワープラント(VPP)の導入が注目されています。VPPとは分散している太陽光や風力などの再生可能エネルギー、蓄電池や需要調整のシステムを、情報通信技術を用いて仮想的に一つの発電所として統合・制御する仕組みです。この技術により、複数の小規模な電源をまとめて電力の供給や需要を調整しやすくすることが可能になり、需給バランスの調整や出力抑制の軽減に貢献します。

VPPの具体的な機能と期待される効果

VPPの導入によって、余剰電力が発生しやすい時間帯には蓄電池に電力を貯め、電力需要が高まる時間帯にはその電力を供給することで、出力抑制を軽減できます。また、デマンドレスポンス(DR)により需要を柔軟に調整し、リアルタイムで供給量を最適化することが可能です。このように、発電事業者にとっては出力抑制による収益損失のリスクが低減され、消費者も安定的な電力供給を受けられる利点があります。

海外事例と日本での導入の可能性

海外でのVPPの成功事例から、日本でもエネルギーシステムの柔軟性を向上させるための導入が期待されています。例えば、ドイツやオーストラリアではVPPがエネルギーの安定供給と効率的な電力管理に貢献しています。こうした実例を参考に、日本でも効率的な電力運用が進むことで、出力抑制の抑制やエネルギーの持続可能な活用が促進されるでしょう。

当メディアではバーチャルパワープラントについてどこよりも詳しく簡単にまとめています。興味を持った方はぜひご覧ください。

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