【小売電力事業者向け】地産地消電力の取り組み

ここでは、地産地消電力がもたらす地域社会への貢献と、電力の安定供給における役割、導入自治体の事例などを紹介します。

目次

地産地消電力の役割と市場動向

地産地消電力が果たす役割とは?

再生可能エネルギーの活用に向けて、注目されているのが「地産地消」の考え方です。地域で発電した電力をその地域内で消費する仕組みにより、次のようなメリットが挙げられます。

  • 発電地と消費地が近いため、送電ロスが抑えられる
  • 域内経済の活性化と雇用創出が期待できる
  • 電力自給率アップによるエネルギーセキュリティの向上

電力地産地消は、エネルギー自給率を上げることで地域の防災力を強化したり、地域経済を活性化したりといった効果が期待できます。カーボンニュートラルの流れの中、国内外でもこの電力地産地消に取り組む地域や自治体が増えています。

日本および世界の地産地消電力市場の現状

エネルギーの地産地消について、世界的に知られているのがドイツのシュタットベルケです。シュタットベルケとは、自治体の資金提供を受けて公共インフラ・サービスを運営する事業者のことで、ドイツの市町村のおよそ1割にシュタットベルケがあると言われています。

シュタットベルケでは、地域に存在するバイオマスや太陽光、風力などの再生可能エネルギーを活用するケースが多く、再エネと公共サービスを両立する、まさに地産地消のしくみを実現しています。

日本にも、シュタットベルケと同じような公益企業がおよそ30あるとされています。2015年に福岡県みやま市で創立された「みやまスマートエネルギー株式会社」は、自治体による電力会社としてはみやま市役所と地元金融機関の出資により設立されました。

みやまスマートエネルギーでは、地域で発電された再エネを市内外の需要者に供給しているほか、地域通貨「みやまんコイン」の流通や、コミュニティスペース「みやまカフェSPON」の運営など、電力事業以外の分野においても積極的に地域活性に取り組んでいます

※数字はすべて2018年時点

参考:国立環境研究所 公式サイト(https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/kisokouza/202104.html

主要な地産地消電力プロジェクト一覧

日本国内の地産地消電力プロジェクト

国内では、自治体や地元企業が中心となり地域新電力を設立し、電力の地産地消に向けた取り組みを行っています。以下は一例となり、この他にも数多くの地域でプロジェクトが実現しています。

地域 事業者 設立年 概要
埼玉県深谷市 ふかやeパワー株式会社 2018年 ・通称『ふっかちゃんでんき』
・資本金の55%を深谷市が出資
・埼玉工業大学と蓄電池技術に関する研究
鳥取県鳥取市 株式会社とっとり市民電力 2015年 ・鳥取市と鳥取ガスの共同出資
・「電源の見える化」システムの構築
・市内にある6校の小学校に試験導入
鹿児島県肝属郡 おおすみ半島スマートエネルギー株式会社 2017年 ・肝付町+近隣の4市5町で連携
・分散型電源活用のマイクログリッド
・サイクルツーリズム向け充電ポイントの設置
大分県由布市 新電力おおいた株式会社 2015年 ・「オール大分」での電力地産地消への取り組み
・地元企業、地銀、由布市、サッカークラブなどが出資
・子育て世帯に向けた電力プランの導入

参考:経済産業省資源エネルギー庁 公式サイト(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/solar-2019after/regional.html

海外の地産地消電力プロジェクト

海外における地産地消電力の代表的な例は、先にも採り上げたシュタットベルケです。ドイツ全土に1,458社あるシュタットベルケのうち、最も多く実施している事業が電力事業、次いで上水道、ガス、熱供給事業であり、ドイツでは社会インフラ全般の地域化が進展しています。

緯度の高いドイツのシュタットベルケでは、コージェネレーションを活用した熱電併給が主流であり、マイクログリッド(自営電力線)、サーマルグリッド(自営導管)など、自前設備を活用した地産地消モデルが構築されています

参考:[PDF]一般財団法人日本エネルギー経済研究所(https://eneken.ieej.or.jp/data/7847.pdf

地産地消電力の導入と成功事例

日本における成功事例

浜松新電力(静岡県浜松市)

静岡県浜松市では、2015年に地域新電力「浜松新電力」を設立しました。浜松市の地理は山間部と人口集中エリアが偏っており、かたや電力インフラ整備に限界がある過疎地、かたや電力需要の密集する都市部という2つの異なる特徴を持っています。

東日本大震災をきっかけに、国に頼りきりだったエネルギー政策を自治体レベルでやろうという知事の号令のもと、電力の地産地消を目指す取り組みが始まりました。日照時間が国内トップクラスという浜松市の環境利点と広大な平地を生かし、太陽光による大規模発電が実現しました。

発電された再生可能エネルギーは、地域の公共施設や企業、市内すべての公立小中学校で消費されます。学校内に設置された発電量モニターでは、生徒たちに電力の自給自足の様子を『見える化』でき、次時代の環境意識の醸成にも貢献しています。

このような取り組みにより、浜松市では電力の地産地消率80%という高い成果を挙げました。今後も、再生可能エネルギーの普及に関わる補助金や低金利融資制度を通じて、市民サービスへの還元を図っています。

参考:経済産業省資源エネルギー庁 公式サイト(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/solar-2019after/regional/regional01.html

地産地消電力の未来と地域社会への影響

ここまでご紹介してきたように、電力の地産地消は今や世界中で多く導入されており、今後もこの流れはますます加速すると考えられています。特に、マイクログリッドを活用した再生可能エネルギーのアグリゲーションは、電力需要の平準化によるコスト削減や防災力の強化につながり、地域の自律性を高めます。

また、地域の力を集結して再生エネルギーを利活用することは、地域ブランディングの新しい形であるとも考えられます。環境、そして住む人に優しいまちづくりを通して、再エネ事業が地域に新たな付加価値を創出します

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